10月13日奥多摩の青梅駅に降り立った。
駅構内には往年の有名映画の大きなポスターというか広告看板が飾ってあり、
その中の1枚が「ロミオとジュリエット」であった。
オリビア・ハッセーがジュリエットを、
レナード・ホワイティングがロミオを演じた1960年代の名作である。
さて、今日の、本題は映画ではなくミュージカルの「ロミオとジュリエット」である。
まずは、今年8月の東京宝塚劇場の月組公演。
宝塚でのロミオとジュリエットは、
残念ながら東京には来なかった一昨年の星組、
昨年の雪組に続く三度目の上演であるが、
今回の人気で宝塚の名作の一つに数えられる作品の仲間入りをしたと思う。
将来のトップスターによる個性のあるロミオの今後の続演を期待したいものである。
さて、今回の月組公演は、龍真咲のトップお披露目であるとともに、
明日海りおとの役替わり公演であり、話題性のある公演となった。
幸い私も夏休みをとり、劇場近くのホテルに宿泊して、
同じ週に双方の公演を観ることができた。
龍真咲と明日海、個性の違う二人がそれぞれ演ずる、ロミオとティボルト。
ロミオの持つ内面の優しさや、
何代にもわたり続いているモンタギュー家とキャビュレット家の
不毛な対立を終わらせたいという願い、
ジュリエットに対する一途な思いなど、
これには明日海の個性がぴったりだと感じたし、
またいとこゆえにかなえられないジュリエットに対する恋心、
その代償がモンタギューなかんずくロミオに対する激しい敵意となるティボルト。
荒々しくも叔母との関係にも悩む。こちらは龍真咲がはまり役である。
また、ジュリエット役の愛希れいかも
初々しい清潔感で新鮮な舞台を創り上げていた。
周りを固める男役たちも「新生」月組にふさわしい陣容。
神父役の英真なおきが独特の味をだし、圧巻は乳母役の美穂圭子だ。
歌はもともと定評があるが、彼女のソロ場面はこの作品の一つの見どころ。
そしてこのソロに限らず、全体に歌が素晴らしい。
「エィメィ~」と思わず口ずさんでしまうのだ。
そして、10月にはフランス版「ロミジュリ」を、渋谷ヒカリエで観ることができた。
ヒカリエと言えば話題の中でオープン、
つい数か月前には、ロミジュリの流れを引く「ウエストサイドストリー」が上演されたばかりだ。
(これはチケットを持ちながら、私自身は行けずに終わった)
話はロミジュリに戻るが、フランス版の迫力はすごい。
訳される字幕のセリフと歌詞は、登場人物たちの内面を深くえぐり、
権力の持つ本質的な抑圧性や、人間の持つ多様な否定的な側面も容赦なく突きつける。
そこは宝塚版との大きな違いだ。
私が観劇した日も最後はスタンディングオベーション。
しかし、宝塚は宝塚、フランス版はフランス版、それぞれの良さはあり、
そしてそれは、やっぱり宝塚は宝塚、美しくて宝塚、きれいで宝塚、なのである。