久しぶりの和もの。NHKの大河ドラマ「江」は同時代だ。
登場人物もかなりかぶる。もちろん「江」に焦点を当てた作品と「三成」を主人公にした作品では比べるべくもないが、大河では、秀吉役のつくりの軽さや、三姉妹の現代風口調など、家康が一人で時代劇をやっている感がないでもない。
一方、宝塚の方は、未沙のえるの「秀吉」、美穂圭子の「おね」の専科からの出演者を初め、寿つかさの「家康」など、堂々たる布陣である。
主役の三成の大空祐飛と茶々の野々すみか、お互い雰囲気を良く出している。
そして、この引き立て役の役回りの疾風を演ずる凰稀かなめがいい。
さて石田三成は、理想と理念を重視した武将であり、当時の倫理からすれば倫理的な義に徹した武将として、現実主義の家康の前に関が原で散って行く。
源義経や真田幸村と同じく、最後はいずれも「敗者」でありながら、ともに日本人の心に深く残る武将である。
本舞台には登場しないが、三成の最大の盟友、直江兼続の主家上杉家の銘は「義」である。直江兼続を大河で一躍有名にした原作の作家火坂雅志によれば「義」とは、「私欲を抑え、公のためにことをなすこと」である。
しかし、本舞台のテーマの「義」は、当時の最大の倫理規範、主家に対する「忠義」である。
一方、「愛」はまた、直江兼続の旗印である。この「愛」は、火坂雅志によれば、それまでの定説だった「愛宕大権現」や「愛染明王」の頭文字ではなく、「仁愛」の愛と説明されている。
そして、本舞台のテーマの「愛」は、人間の永遠のテーマ、そして宝塚のテーマ、男女の愛である。
直江兼続の一生は、「愛と義」に貫かれ、その二つは矛盾はしない。
しかし本舞台のテーマ「石田三成の永遠の愛と義」は、盟友兼続と同じ言葉を掲げながら、「秀吉への義」と、「茶々への愛」と激しい葛藤の中でいずれをも貫きながらの美しい生涯を生きる、三成の物語となっている。
この三成と茶々を、祐飛とすみかが好演している。
ああ、こういう描き方もあったのか、と大石静の脚本に納得する次第である。
そして、ああやっぱり宝塚だと。
今公演も、何人かの生徒さんとお食事する機会を得ました。
どうもありがとうございました。