蘭寿とむ主演。宝塚花組公演ファントムを観る。
8月13日・26日
今回のファントムは、5年前とはまた違ったファントムをみせてくれている。
蘭寿は心の深い役者だ。
エリックの歌「僕の叫びを聞いてくれ」「僕の叫びを聞いてくれ」「僕の叫び・・・・」
エリックは、もって生まれた醜状のゆえに、仮面をつけオペラ座の地下で生きる。
悲嘆にくれ泣き続けたであろう少年時代、心に残る母の美しい歌声。
その深いエリックの心の叫びを歌い、そして演じうる役者はそういない。
蘭寿がその人だ。
オペラ座の前支配人、壮一帆のキャリエール。蘭寿と同期。エリックの父として、エリックの人生の苦しみと父としての苦しみを背負い、それはまた複雑な年輪を感じさせる父の演技が要求される。最後の父と子の銀橋の場面は、だれもがみんな涙を止めることができないクライマックスであるが、壮が蘭寿とともに本当によく演じている。
蘭乃はな。歌姫クリスティーヌ・ダーエ。清楚で上品な娘役トップとして、蘭寿とむとの蘭蘭コンビとして、今後も期待が募る。
特筆は桜一花のカルロッタ。カルロッタはあの出雲綾のイメージが強く頭の中にも定着し、どっしりと貫録のある娘役がやるものとの先入観が出来上がってしまっていた。
そこへ、あの小柄な細身の桜一花。あー。それがまあ、お芝居も迫力も、なんとまあすごい。これがカルロッタだと。もうこれは絶賛だ。こんなにうまい娘役なのだと。
シャンドン伯爵(フィリップ)はダブルキャスト。愛音羽麗がダンディで美しい。
華形ひかる、朝夏まなとと、他のダブルキャストのそれぞれを観ようとすると日程が難しい。幸いに、私は8月中に双方をみることができた。
総じて素晴らしく仕上がっている。
2回目の観劇。オケボックスでタクトが振られ演奏が始まる。この音楽の素晴らしさ。このメロディーが作品全体の素晴らしさを伝える予兆のように心に響いてきて思わずそこで涙ぐんでしまう。
宝塚のファントムはそんな作品だ。
シゲニー・イートン