今年の東京宝塚劇場の上京2作目は、
月組の「ベルサイユのばら」オスカル&アンドレ編。
宝塚の「ベルばら」の中の定番中の定番で、
オスカルがアンドレに愛を打ち明ける場面は何度見ても飽きることがない。
もちろんこの作品が何度も再演を重ね、支持され続けているのは、
背景にあるしっかりとした時代認識とその中に織りなす人間模様、
フランス宮廷のきらびやかさと平民の革命への情熱、
両者を貫いて人間愛に生きたオスカルの魅力にあることは言を待たない。
オスカルのジョルジュ家は
王室を守る近衛隊の軍人を代々勤めてきた家柄であるにもかかわらず
子供は女ばかりで跡継ぎとなる男の子が生まれてこなかった。
そこで生まれた女の子を軍人である父親の後継者としてオスカルと名付け、
男として育てられる。
宮廷から革命戦士へ、男として軍人として生きる強いオスカルと、
アンドレに対して抱く女性としての恋心の表現の対比はこの作品の見せ所でもある。
今回は、そのオスカルとアンドレを、
月組のトップ龍真咲と明日海りおが交代で演ずる役代わり公演である。
熱心な宝塚ファンであれば複数回劇場に足を運びたいと思う仕掛けである。
かくいう私も、2人のオスカル、2人のアンドレを観るために劇場に足を運んだ。
さて、私には今までの舞台の印象から、龍真咲が男くさい男役、
明日海りおの方がより中性的な男役と思っていたので、
オスカルはより明日海の方が役に向いているのではないかと思っていた。しかし、
龍のオスカルが女っぽいところは女っぽく軍人の場面とのメリハリがきいていて、
さすがトップと見直したものである。
昨年のロミオとジュリエットも役代わりではあったが、
双方ともライバルの男同士ということもあって、
今回のようなくっきりとした対比はなかっただけに、
新鮮な印象を受けたものである。
さて、今回の公演で、副組長の花瀬みずかが退団した。
いつトップ娘役になってもよい実力を備えながら、その時期を過ぎ、
上品で宝塚らしい大人の雰囲気も出せる娘役さんとして活躍されてきた。
オスカルの母親など気品のあるお芝居をもう観ることはできない。
千秋楽のご挨拶で、「清く、正しく、美しく」と述べられたが、
宝塚では当たり前すぎる言葉でありながら
これほどこの言葉にふさわしい人もいないと心打たれるものがあった。
これからのことはまだ決まっていないといわれていますが、
幸せな人生を送ってほしいと願っています。