12月18日、日生劇場で「モンテ・クリスト伯」を観る。
エドモンダンテスに石丸幹二、メルセデスに花總まり、
そして女海賊ルイザに彩吹真央(ダブルキャスト)。
これは約半年前に、宝塚宙組で鳳稀かなめの主演で上演されたもので、
それを機に岩波文庫の「モンテ・クリスト伯」全7巻を読み終えた自分としては
見逃せない作品で興味があった。
そもそも原作では海賊の親分は男性であり、
それをあえて女性に置き換えて、
宝塚では演技力に定評のあった彩吹を登場させたのである。
その彩吹には期待通り、生き生きと迫力満点での演技を見せてもらった。
また、宝塚でトップ娘役が長かった花總まりの舞台を見るのも久しぶりのことである。
メルセデスは雰囲気のある娘役にぴったりの役柄である。
宝塚宙組の舞台でも、鳳稀かなめの相手役として実咲凛音が好演していた。
少年のころ「岩窟王」の名で知った長い牢獄生活の主人公の境遇に
何ともいえぬ恐怖を感じた記憶が残っているが、
このデュマの作品を首尾よく展開する復讐に快哉を送るだけではなく、
復讐後、逆の意味で「許す」ということは何なのか、
というそこが一番のテーマなのであろう。
日々の生活での個人のささいな感情から、
日本を取り巻く国際情勢での国家間の対立においても、
「赦す」ことが未来につながる確実な一歩と思わずにはおられない。
宝塚の石田作品も、明確にそれを意識した脚本演出となっていたが、
それぞれの復讐劇には人間として決して許すことのできない、
重い事実がのしかかっていることも現実であり、その葛藤をどう描くか、
これからもあちこちで演じられていく作品であろう。