宝塚100周年の東京宝塚劇場は、
1月雪組壮一帆主演の「Shall weダンス?」に続いて、
2月14日初日の星組柚希礼音主演の「眠らない男ナポレオン」~愛と栄光の涯に~である。
作・演出は宝塚の数々の名作を手がけている小池修一郎、
音楽はジェラール・プルスギュルヴィックというフレンチポップス界の大家にお願いし、
専科からは、歌唱力に定評のある美穂圭子をはじめ、
演技力十分の実力派の一樹千尋、英真なおき、北翔海莉と4名も出演と、
劇団もかなりの力の入れ方であることが伝わってくる。
そして、現在トップオブザトップの柚希に「強い男」ナポレオンを演じさせる。
この日は、来日している米国の若い弁護士が一度宝塚を観たいというので、
一緒に案内したのだが、さすがに見応えはあった。
話は有名なナポレオンの生涯なので、
外国人でもストーリーはわかりやすかったとみえ、
かなり感激し、また来日したときはみたいとの積極的な評価をいただいた。
作品としてはすばらしいものではあるが、
強い主人公であるだけに、感情移入し泣けるところがない。
場面場面で聞かせる歌も多くあり、
宝塚らしいジョセフィーヌとの男女のラブストーリーもちりばめられている。
しかし、豊臣秀吉やアレキサンダー大王の生涯がそうであるように、
強い権力を持ち、他者、他民族を制服することで直線的に生きる男のストーリーは、
多くの観客にシンパシーを感じさせることは難しい。
ナポレオンに剣をゆだねてすべてを迫るジョセフィーヌの場面も、
自らの過去が邪魔をして、Love is stronger than powerという
純粋な愛の強さを感じ取るまでにはいかないのも、やむを得ないものがある。
モンテクリスト伯においてはメルセデスが、
息子を守るためにモンテクリスト伯に迫る場面は、
母親の捨て身の強さがシンパシーを誘う。
かといって、
これは、この舞台への批判でもマイナス評価でもないことは断っておきたい。
作品は100周年の大作として十分に成功を収めている。
ただ、私の個人的な感覚が題材とマッチしないのであろう。
歴史を知りたいというレベルでは、
フランス革命からの激動の時代は私も十分興味があるが、
一方、21世紀の現在、
世界を統合する理念は20世紀以前の戦いや征服であってはならない。
私たちが待ち望むのは、
国家間の利害を平和的に調整できる卓越した能力を有するリーダーであり、
飽くなき平和への希求の精神を根底に持つリーダーである。