今年、東京弁護士会では、3月の「ルパン三世」、8月の「王家に捧ぐ歌」、
そして12月に「新源氏物語」の観劇を企画しているが、
ほかにもお勧めしたかった作品がある。
月組「1789 -バスティーユの恋人たち-」である。
今までの宝塚におけるフランス革命ものといえば、
ベルばらを筆頭に数多くの作品が発表されている。
それらの主人公は王宮の出身者や貴族であるのに対し、
今回の「1789」は、革命の側から、
それも主人公はロベスピエールなどの革命家ではなく、下層の市民である。
そして音楽や衣装も魅力的であり、一見に値する作品である。
主人公の相手役は、王宮に勤めながら
徐々に主人公に好意を抱き愛し合うという展開であるが、
その相手役オランプを務めるのが、トップ娘役ではなく
抜擢された2人のダブルキャストであるのも特異。
トップ娘役の愛希れいかが演ずるのはマリー・アントワネット、
今回の全体の配役からはその重厚さから愛希以外で務まるべくもなく納得という次第。
また、バスティーユ襲撃に向かう民衆の群舞は世界広しと言えども
宝塚ならではのものであり、「声なき言葉」の名曲とともに、
この作品のクライマックスである。
そして、その後に続く人権宣言の唱和の場面は、
現代に生きる私たちの魂を揺さぶるものである。
小池修一郎は、この作品を引き続き帝国劇場で演出する。
フランス発のミュージカルですでにヨーロッパで絶賛を博したこの作品が、
宝塚バージョンと、帝劇バージョンで連作というのも興味深い。