新橋の第一ホテル東京で、謝依旻女流本因坊の就位式が行われ、
私も出席させていただいた。
2015年度の東京弁護士会の会長時代に、
弁護士会で行った囲碁・将棋祭りに参加された女流棋士の青葉かおりさんから
謝依旻さんが大の宝塚ファンであるとのお話を伺った。
そのお話がきっかけとなり、弁護士会の役員の宝塚観劇会にご参加いただき
引き続いてのお食事会で楽しく懇談したのが始まりである。
女流五冠時代を築き最強の女流棋士の地位を確立したものの、
前回は藤沢里菜さんに本因坊を奪われ、今回は奪還戦であった。
それも2勝2敗で迎えた第5局。何度もだめかと思ったそうである。
そこで就位式で明かしたお話が、宝塚の観劇のお話であった。
第4局終了後、気分転換に観たのが、
東京宝塚劇場で上演中の星組「ベルリン、わが愛」であった。
第二次大戦前夜、ナチスの支配が映画人の中にも徐々に忍び寄る中で、
主人公の若い映画監督が国民の皆さんが楽しむための映画を撮り続けたいと考えるが、
映画を政権のプロパガンダと位置づけるナチスとの相克で困難な状況に直面する。
そんな主人公を、老俳優が「最後まで諦めてはならない」と励ます。
謝さんは、最終局の対局中に何度もこの台詞を思い出し、諦めずに打ち続けた。
そして第5局に勝利し、本因坊を奪還することができた。
取材に来ていた、台湾メディアが、この挨拶の内容を台湾で詳細に報道したそうである。
台湾での宝塚人気は相当高く、
この星組が今年の秋には、台湾公演を行うことが決まっている。
会場はほとんどが囲碁界の方や、それに関係するスポンサーの報道機関などの方々である。
おそらくこの同じ舞台を観劇した方は、会場にはほとんどいなかったのではないかと思われる。
そのごく少数の共通の舞台の観劇を体験した親しい出席者、
私と謝さんの共通の知人である宝塚のOGさんとその話を聞きながら、
ともにその場面を追想して喜びに浸ったものである。
宝塚歌劇が共通の趣味である謝さんの今後の活躍を祈る次第である。