ある朝、自宅を出る直前に、家内から「あなたこの記事読んで」と、10日付けの朝刊を渡された。それは、本年11月5日に亡くなられた絵本作家の佐野洋子さん追悼の「大人の心 本音で揺さぶる」との記事だった。
代表作は「100万回生きたねこ」。ふてぶてしい主人公の「ねこ」があるとき白いうつくしいねこに出会い一緒になる。ともに老い、「ねこ」は愛する「白いねこ」が亡くなって初めて泣く。そして泣き続けて自分も動かなくなる。100万回生きたねこは「もう決して生きかえりませんでした。」と結ばれる。
私を含めて、私たちの世代の企業戦士の多くは、飼主がいなくなってからのこの絵本の主人公の「ねこ」のように、自己実現のために働き続けてきた。自身の人生を生き、他者をこころの底から愛するということの難しさ、その意味の深さを教えてくれる絵本である。最後に悔いのない人生を生きたと言い切れる、もう生まれ変わらなくてもいいといえる、あの「ねこ」のように最後を迎えたいと心を揺さぶられるのは、記事のタイトルどおりである。